孫子とビジネス戦略

 勝利と敗北だけでなく「不敗」という位置づけが興味深いです。企業でいえば、業界トップや高収益でなくても、安定した黒字というような状態のことです。
 業界の制覇を目論んだり、ライバルをひたすら蹴散らしていくのではなく、質的競争だけを伴った共存共栄を目指すという考え方(ポーターも同様の主張)には大変共感できるものがあります。相手を殲滅することを考えたくなったら頭を切り替える必要があります。
 この本の後半の適用事例はあえて必要なかったような気がします。

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孫子の戦略、2つの原理

 ★原理1 失敗が許されるか否か
  失敗が許されない場合は(負けたら致命傷になる場合)
  ①彼を知り己を知れば百戦して殆うからず
   (ライバルと自分の実像を事前に把握すること。)
  ②勝算なきは戦わず
   (勝てる算段がなければ戦わないこと。退却や融和も戦略的な判断の1つ)
  ③兵は拙速を聞く
   (戦いを泥沼化させないこと。負けを認め致命傷になる前に退く)

 ★原理2 敵は1人か複数か
  ①百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり
   (ライバル多数の場合は、自らの戦いを率先するより、自分以外の二者が戦って力尽きたところを制圧するのが最も有利。)

  ②善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以って敵の勝つべきを待つ
   (まず自軍の態勢を固めておいてから、じっくり敵の崩れるのを待つ)

  ③兵の形は水に象(かたど)る
   (敵の弱みをつくことは、水が器のひび割れを見つけるようなもの)

■主導権を握り、敵を疲弊させるには

 ★兵は詭道なり(戦争はしょせん騙し合い)
  ①能なるもこれに不能を示す
   (自分は弱いと見せかけ油断させる)
  ②近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示す
   (こちらの意図を見誤らせる)
  ③善く戦う者は、人を致して人に致されず
   (相手の作戦にのらず、こちらの作成にのせる)

 ★相手を思いどおりに動かし主導権を握るには
  ①利益(行動を起こさせるには、そうすれば有利だと思いこませる)
  ②不利益(行動を思い止まらせるには、そうすれば不利だと思いこませる)
  ③急所(相手の最も重要視している所を奪取する)
  ④勢い(激しい勢いに乗じ一瞬の瞬発力を発揮する




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